4月4日。
 今日は一体、何の日か。
 いや、別に何の変哲も無い普通の日である。
 一年の中のたった一日、いわば1/365の一日でしかないはずだ。
 まあ、そんなことは問題にすべきことではない。
 今、重要なのはこの日、物語の主人公である鷹野湯 刃。
 屋根の上に座っている彼の周りに放置してある無数の空の酒瓶だろう。





「刃クーン」

 下から情けない声が聞こえる。
 その声の主は、高坂優奈。クラスメートの一人で中々付き合いの深い友人の一人だ。

「刃クーン! 何処いったのー?」
「……、高坂もここは分からないか」

 隣においてある、今日何本目とも知れない酒を飲み干す。
 片手で酒の上部を持ちゆらゆら揺らしながら、空を仰ぐ。
 今の俺には天井という概念が無い。俺は今、『家の中にいない』

「星も綺麗だな……だけど、今はやっぱり……桜のほうが綺麗だなー」

  片膝を立て、俯き加減に自身の下のほうにある桜に視線を向ける。

「あっ!? んもぅ! 刃クンから私を誘ってくるなんて、おかしいと思ったんだよ!」

 ベランダに立てかけておいた、梯子に気付いたのか、屋根の上に高坂が昇ってくる。
 気のせいか怒っているような気がしないでもない。
 足を踏み鳴らしながら、俺の側にやってくる。……怒ってる。
 でも、その怒る仕草が何か面白くて俺は笑ってしまった。

  「何してるの……って聞くまでも無いね」

 呆れたように聞いてくる。

「まあまあ、高坂座れよ、花見酒もいいもんだぜ」

 勿論、事前に自ら屋根に上がり座っても大丈夫だということを確認してある。
 その上、ビニルシートを敷き、汚れ対策もしてある。

「花を『見下ろす』花見酒……中々味わえるもんじゃないぜ?」

 現役高校生とは思えないセリフを悠然と吐き、うつ伏せに寝転んだ。
 贅沢を言うならば田舎に行って、もっと綺麗な空気の下で見たかったなとか、  そんな思いもあったけれどそれを言い出したらきりが無いので止めておく。

「飲むか? 安酒だけど美味いぜ?」

「私は遠慮しておくよって、うわっ、刃クンお酒くさっ! どれだけ飲んだの!?」

「高坂に電話をかけたときにはもう飲み始めていて、それからここに来てからこんなもん」

 周囲に無造作に転がってある酒瓶を指す。

「本当に!? あれだけ全部刃クン一人で!?」

「ああ、あれ全部俺が飲んだやつ。、流石に飲みすぎたか……な?」

「そう思うんだったら新しく開けないでよ!」

「まあ、いいじゃないか無礼講と行こうぜ……ほら、桜も綺麗だぜ」

「ダーメ、あっ……本当……綺麗……」

「当然、俺の家の屋根から眺めてるんだからな」

「刃クン、完全に酔ってるね」

「……ああ、そうかもな」

「なあ、高坂?」

「どうしたの?」

「もうしばらく、ここにいるか……」

言うと同時に梯子を蹴落とす。

「それは私に選択肢は無いってこと?」

「まあ、そうかもしれないな……」

 高坂はちょっとだけ首を捻って、膝を組んだ。
 見下ろすと、満開の桜が見える。

「なぁ、高坂」

「なに?」

「こういうのもたまにはいいな」

 唐突にそんな事を口にしていた。

「そうだね」

 そういいながら笑った。それにつられてか高坂も一緒になって笑う。

 いつのまにか俺達は手を繋いでいた。

 高坂の俺の手を握る力が強くなる。俺もそれに軽く握り返すことで答えた。

 いつまでも繋いでいたいと思った手と手。いつまでもこの時間が続いて欲しいと思った。

 けれど、いつかは終わりが来る。その終わりを如何にして向かえ、そしてその後にどうやって繋げるか、 俺はそれを考えていこうと思う。


[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析